こんにちは!大塚@社会保険労務士です。

「人手不足だし、試用期間もあるから、とりあえず採用してみよう」

このように考えたこと、ありませんか?

試用期間があるんだから、合わなければそこで判断すればいい。そう思いたくなる気持ちはよくわかります。

ですが、ここに大きな落とし穴があります。

私は採用を「結婚」に例えることがありますが、試用期間は「お試し同棲」ではありません。法的には婚姻届を出した状態と同じ。入社初日から労働契約は成立しているので、「やっぱり合わなかった」で簡単に白紙には戻せないのです。

今回は、社労士の立場から試用期間に関する誤解と、そこから見えてくる「採用の入口の大切さ」についてお話しします。

目次

①試用期間はただのお試しではない
②「合わないから」では辞めてもらえない
③本採用を見送るために必要なこと
まとめ

法律上、試用期間中の雇用契約は「解約権留保付き労働契約」と呼ばれます。要するに「通常の解雇よりやや広い裁量が認められる労働契約」です。

ポイントは「やや広い」であって「何でもあり」ではないということ。「試用期間」という名前が誤解を生みやすいのですが、「仮採用だからいつでも辞めてもらえる」は誤りです。

本採用を見送ろうとした際、相手が「わかりました」と受け入れてくれれば済むかもしれません。ですが、問題は納得してもらえなかった時に起こります。

本採用拒否であっても、会社側には「なぜこの判断に至ったのか」を説明できるだけの根拠が求められます。「なんとなく合わない」「期待と違った」では通りません。

また、入社14日を超えると30日前の解雇予告または解雇予告手当が必要になります。「試用期間中だから予告なしで大丈夫」と思っている方は少なくありませんが、これも誤解です。

仮に能力不足を理由に本採用を見送る場合、「会社側が十分な指導と改善の機会を与えたか」が問われます。黙って様子を見ていて、最終日に突然「見送ります」では通用しません。具体的には以下の対応が求められます。

  • 入社時に試用期間の目的と評価基準を書面で共有する
  • 面談で課題と改善目標を記録する
  • 口頭指導でも日時と内容をメモに残す
  • 「このままでは本採用が難しい」と明示し改善の猶予を与える

つまり、試用期間は「お試し期間」ではなく「観察・指導・記録の期間」です。

…ここまで読んで「正直、そこまでの準備は大変だな」と感じた方もいるかもしれません。特に日々忙しい中小企業の社長がこれらを全て完璧にこなすのは、現実的にはかなりハードルが高いですよね。

だからこそ、発想を変えてみてほしいのです。

試用期間だよりの採用は、入口の見極めが甘いまま出口で何とかしようとしている状態。ですが、ここまでお話しした通り出口で何とかするのは簡単ではありません。

試用期間で切る準備に労力をかけるよりも、その労力を面接の見極めに注ぐ方が、お互いにとってずっと幸せな結果につながると思いませんか?

それなら、求人の段階で自社に合う人に届くメッセージを発信し、面接でお互いの本音を引き出し、ミスマッチのない状態をつくる方がよほど現実的です。

いかがでしたでしょうか。今回のポイントを整理します。

(1)試用期間中でも労働契約は成立しており「お試し」ではない
(2)本採用拒否には合理的な理由と指導・改善機会の記録が必要
(3)だからこそ求人と面接の段階でミスマッチのない採用をつくることが大事

試用期間に頼るのではなく、入口の採用に力を注ぐこと。採用と労務は別物に見えますが、入口で手を抜くと出口で苦しむという意味では実はひとつながりです。

ぜひ、自社の採用プロセスを見直すきっかけにしてみてください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。