こんにちは!
問い人材活力コンサルタント(社会保険労務士)の大塚です。

本日は会社が義務を負う一般健康診断のうち、雇い入れ時の健康診断と定期健康診断についてお話しします。

法定健康診断とは

会社には従業員に対して健康診断を実施する義務が労働安全衛生法で定められています。

以下、検査が義務付けられている「法定項目」の一覧です。

法定項目雇い入れ時
健康診断
定期健康診断
(1年に1回)
①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査及び喀痰検査
(胸部エックス線検査のみ)
⑤血圧の測定
⑥貧血検査(血色素量、赤血球数)
⑦肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
⑧血中脂質検査
(LDL・HDLコレステロール、TG)
⑨血糖検査
⑩尿検査
(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
⑪心電図検査

定期健康診断に関して、身長や腹囲、胸部エックス線検査、喀痰検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査は医師の判断により省略可能であることが、厚生労働省の告示により規定されています。

定期健康診断は原則1年に1回ですが、対象従業員が特定業務(※)に従事している場合には6か月ごとに1回となりますので注意が必要です。

なお、人間ドックを活用すると上記項目以外に様々な項目の検査をすることができますが、これらは会社が実施すべき健康診断の項目には含まれません。

【特定業務の例】

  • 深夜業を含む業務
  • 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
  • 重量物の取り扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

対象者

対象正社員パート・アルバイト
週の所定労働時間が
正社員の3/4以上
パート・アルバイト
週の所定労働時間が
正社員の1/2以上
雇い入れ時実施が望ましい
定期健康診断
(1年に1回)
実施が望ましい
特定業務への
配置転換時
実施が望ましい
特定業務従事者
(6月に1回)
実施が望ましい

雇い入れ時の健康診断については、3月以内の健康診断結果(前の会社など)の提出があれば省略できます。

費用負担

健康診断にかかる費用

全額会社負担となります。例えば、アルバイトであることを理由に従業員に費用負担を求めるのは一部であっても違法となります。

健康診断受診中の時間

健康診断を受けている時間に対する賃金に関しては会社に支払義務はありません。ですが、支払うことが望ましいされています。従業員によって対応がまちまちになればトラブルになる可能性がありますので、会社として支払うか否かを就業規則で明確にしておきましょう。

健康診断を受診させなかった場合

50万円以下の罰金に科せられる可能性があります(労働安全衛生法 第120条)

会社がいくら受診させたくても従業員が健康診断の受診を拒否するケースがあります。

会社には健康診断を受診させる義務があるわけで、正当な理由のない受診拒否は許されません。

万が一のことがあった場合に困るのは会社ですから受診するようきちんと説得しましょう。

健康診断結果

保管義務

会社は健康診断の結果を5年間保管する義務があります。退職した従業員の結果も保管しておきましょう。

報告義務

常時50人以上(パート・アルバイト含む)雇用している会社は健康診断結果を所轄労働基準監督署に提出する義務があります。健康診断の結果受領と合わせて提出する習慣付けをし、漏れがないように注意しましょう。

安全配慮義務

会社には従業員の生命や身体等の安全、健康に配慮する義務がある旨を労働契約法 第5条で定められており、健康診断で異常な所見があると診断された従業員については、医師の所見が必要になります。

医師に必要な意見聴取を行わずに従業員を働かせ続け、万が一のことがあった場合には会社はその責任を追及される可能性があります。今後も活躍してもらいたい大切な従業員であるからこそ担当の医師にしっかり確認しましょう。

なお、医師が異常な所見がある従業員について就業制限の必要があると判断した場合、労働時間の短縮や時間外労働の制限、労働負荷の制限、深夜時間の短縮などの措置が必要となります。

すべて同時に実施するのは難しくても、業務とのバランスを考慮し必要な措置を検討しましょう。

再検査・精密検査

定期健康診断は会社の義務ですが、再検査・精密検査は会社は法律上の義務を負っていません。ただし、異常な所見がある従業員には安全配慮義務の観点で再検査・精密検査の受診勧奨を行いましょう。

本日はここまでです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!