こんにちは!大塚@社会保険労務士です。
「体力仕事だから男性でないと困る」
「将来を見据えているから若手が欲しい」
そんな意図で書いた「男性限定」「30歳以下」などの表現が法令違反につながることがあります。労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法をはじめとする労働法では、性別・年齢による差別的な募集は禁止。最近では、求人媒体側から修正を求められたり、SNSで「差別的だ」と指摘されるケースもあります。せっかく良い人を採用したいのに、思わぬところで信頼を失ってしまうこともあるのです。
中小企業の経営者や人事担当者からは、よくこんな声を聞きます。
- 年配の方は体力的に厳しい仕事だから…
- 女性が多い職場なので、女性を採用したい
- 会社の平均年齢が高いから若手を入れたい
どれも採用する側としては当然の感覚ですが、この感覚をそのまま求人票に反映すると法的リスクを招くことになります。
国は多様な人が働ける社会の実現を目指しており、採用現場では「誰にでもチャンスを開く姿勢」が求められているのです。とはいえ、現場では法律通りにはいかない現実があります。
では、どうすれば法律を守りながらも、ターゲット層に届く求人票が書けるのでしょうか?
今回は、法令を守りながら伝わる求人票の書き方を4つの視点で説明します。
目次
①仕事内容を具体的に書く
②活躍中の社員を紹介する
③制度や環境で惹きつける
④年齢制限を設ける場合は理由を明記する
①仕事内容を具体的に書く
「男性限定募集」⇒「荷物の運搬など一定の体力を要する業務です」
性別で限定するのではなく、仕事内容を具体的に書くことで求職者に求める人材像を自然に伝えます。
また、ただ肉体労働であることを伝えるだけでなく「屋外での作業が多い」「20kg程度の荷物の運搬あり」など、仕事内容から「どんな環境でどのような仕事をするのか」を判断できるように書きましょう。
②活躍中の社員を紹介する
「30代以下限定」⇒「20〜30代の社員が中心となって働いています」
活躍中の社員を紹介することで、年齢や性別を限定せずに職場の雰囲気を伝えられます。
求職者は「自分も馴染めそうか?」を想像して応募します。20~30代がメインで働く職場には、経験豊富な中高年のベテランより、どちらかというと若い人材の応募が集まりやすいということです。
③制度や環境で惹きつける
子育て世代の男性を狙うなら
⇒「パパ育休制度があり、家庭と両立しやすい」
子育て世代の女性を狙うなら
⇒「育休後の時短勤務や柔軟な働き方が可能」
経験豊富なベテラン層を狙うなら
⇒「経験を活かして後輩育成に関われます」
直接的に「若手」「女性」「シニア」とは書かず、制度や環境で自然に伝えることが大切です。
そして、もしその制度がないなら、採用の機会に整えることも戦略の一つです。
④年齢制限を設ける場合は理由を明記する
一例ではありますが、以下のようなケースの場合は合法的に年齢制限を設けることが可能です。
- 長期的なキャリア形成を図る場合(35歳未満など)
- 定年がある場合(65歳以下など)
- 技能、ノウハウの継承を目的とする場合 など
例えば、単に「若手を育てたい」ではNG。若手層を長期的に育てる必要があるためなど、明確な根拠を添えることが必要です。
まとめ
企業側にとっても求職者にとっても、年齢や性別を明確にした方がわかりやすい。そう感じる方も多いでしょう。しかし、「女性活躍」「シニア活躍」など社会全体の流れを踏まえれば、法令に沿った表現が求められます。
とはいえ、実際には決めつけが採用の壁になることもあります。
ある企業では、若い人材の採用を強く希望していたものの、改めて自社で活躍している社員の共通点を分析したところ、経験豊富で責任感のある中高齢の転職層が多いことに気づきました。
その層に合わせて求人内容を見直した結果、定着率と生産性が大きく向上したのです。
「本当に男性(女性)でなければいけないのか?」
「本当にその年齢層でないと難しいのか?」
このような自社の方針を見直す視点も、ときには取り入れること採用活動においては必要だと感じます。